タイ・バンコクにある日本人のための内科・小児科・皮膚科

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子宮頸がん

子宮頸がん(Cervical Cancer)

 

1. 子宮頸(けい)がんとは

子宮頸がんは、性交渉を介してヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症しますが、HPVに感染しても、必ずしもがんになるわけではありません。感染者の約90〜95%は無症状のまま、半年から1年以内に自然にHPVが排除され、正常な状態に戻ります。

しかし、HPVを排除できなかった場合、約10年かけてがんへと進行します。その過程で、子宮頸部の細胞が異形態に変化し、「子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia:CIN)」と呼ばれる状態になります。

CINは進行の程度によってCIN1からCIN3までの3段階に分類され、CIN2およびCIN3はまとめてHSIL(ハイシル)と呼ばれます。検査により早期に発見し、適切な治療を受けることができれば、がんになる前に完治することが期待できます。

 

2. いつ子宮頸がん検診を始めるか

厚生労働省 健康・生活衛生局がん・疾病対策課のガイドラインでは20歳から子宮頸がん検査を推奨しています。
令和5年12月18日|厚生労働省 第40回がん検診のあり方に関する検討会 pdf

年齢推奨する検診と頻度
20〜29歳子宮頸がん細胞診 2年に1回
30〜60歳子宮頸がん細胞診 2年に1回
HPV検査 5年に1回
60〜69歳子宮頸がん細胞診 2年に1回

65歳以上の方は、検診を終了するまでの10年間に適切な子宮頸がん検診を受け、一度も異常が見つからなかった場合、それ以降の検診は不要です。ただし、持病のある方や子宮を摘出された方などは、検診の必要性が異なる場合があります。

また、不正出血などの症状がある場合は、定期検診の時期を待たずに早めの受診が大切です。不安な点がある方は、まずは当院までお気軽にご相談ください。

 

3. 子宮頸がん細胞診(pap smear)・HPV検査のながれ

3.1. 問診

自覚症状や月経の状態、出産経験や婦人科に関わる病気の有無などを伺います。

3.2. 診察(内診)

子宮頸がん検診として視診と細胞診そして触診を行います。問題がなければ内診は1〜2分で終了します。

  1. 下着を外し当院の専用ズボンに履き替えた状態で内診台に乗ります。
  2. 仰向けで膝を開いた体勢になります。
  3. 子宮頸部を視察するため膣に器具を入れます。痛みを感じる場合は、膝をしっかり開き太ももの力を抜くと痛みを感じにくくなります。
  4. 子宮頸部を専用のブラシで擦ります。
  5. 手で膣側とお腹を触診し、子宮や卵巣の形や大きさを観察します。
  6. 検査時の潤滑剤を拭き取り、内診は終了です。

3.3. 内診の結果

内診の結果を説明し、その日の検査は終了です。検査の影響で数日間少量の出血が続くことがありますが、通常は心配ありません。後日、細胞診やHPV検査の結果説明を行います。

子宮頸がん検診は月経期間中を避けて受けることで正確な結果を得やすくなります。不正出血が続く場合は婦人科疾患の可能性があるため、出血が止まるのを待たずに主治医にご相談ください。当院のスタッフはすべて女性ですので、安心してご来院ください。

 

4. 子宮頸がんの予防接種(HPVワクチン)

ヒトパピローマウイルス(HPV)は200種類以上ありますが、癌発症の原因になるリスクが高いとされているのが16型と18型のHPVです。6型と11型は癌のリスクは低いものの、尖圭コンジローマを発症する恐れがあります。

癌になる可能性が高いHPVの型

16・18・31・33・35・39・45・51・52・56・58・59

癌になる可能性が低いHPVの型

6・11・42・43・53・61・62・70・71

2025年現在、子宮頸がんの予防接種は2価・4価・9価の3種類があります。
「価」とは予防できるHPVの種類を指します。

種類対象HPV型
2価HPV 16, 18
4価HPV 6, 11, 16, 18
9価HPV 6, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58

タイでは4価ワクチンが2006年に、9価ワクチンが2014年に国の認可を受けており、現在は9価ワクチンの接種が主流です。

HPVワクチンは9歳から26歳までの接種が推奨され、感染前に接種を受けることで約99%の予防効果が期待できます。また、26〜45歳の方や既に感染歴のある方でも、未感染型に対する予防効果が期待できます。

予防接種のスケジュール

  • 健康な9〜14歳(男女):2回(初回+6〜12か月後)
  • 健康な15〜45歳:3回(初回+2か月後+6か月後)

Q1: ワクチンの副反応はありますか?

回答: 一般的な予防接種の副反応と同様に、打たれた患部に痛みや腫れが出ることがあります。深刻な副反応はとても稀です。

Q2: 妊娠中でも打てますか?

回答: 妊娠中はHPVワクチンの接種は認可されていません。不妊治療を始める1カ月前から予防接種を完了させておきましょう。もし途中で妊娠してしまった場合は産後に残りの予防接種を受けてください。

Q3: 4価のHPVワクチンを打ったことがあるのですが9価のHPVワクチンを打つ必要はありますか?

回答: 4価のHPVワクチンを接種済みであれば9価のHPVワクチンを打つ必要はありませんが9価に含まれる型の予防をご希望の方は最後の4価のHPVワクチン接種から1年後に9価のHPVワクチン接種が可能になります。

Q4: 男性もHPVワクチンを接種できますか?

回答: コンドームを着用しても、HPVの感染を100%防ぐことはできないといわれています。成人男性に対する大規模な治験はまだ十分に行われていませんが、HPVワクチンを接種することで、尖圭コンジローマ(性器いぼ)、肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんなどの発症リスクを減らせるとされています。このため、予防効果を期待してワクチン接種を選択される男性も増えています。


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